MENU

本当は何時間寝ればいいの?医師が教える“適正睡眠時間”の考え方

目次

🟦導入

「自分にとって、どれくらいの睡眠時間が適切なんだろう?」
多くの人が一度は考えるテーマです。

かつては
「最低6時間必要」「7〜8時間が理想」
といった“万人に共通する基準”が語られた時代もありました。

これらには確かに、疫学研究や大規模調査に基づく根拠があります。
(※代表的なのは 睡眠時間と死亡率のU字カーブ研究 や、
米国睡眠財団の National Sleep Foundation ガイドライン など。)

しかし近年では、
「睡眠時間は個人差が大きい」
「必要量はライフステージや生活負荷で変化する」
という考え方が主流になってきています。

この記事では、
従来の“決めつけ型の睡眠時間”とは異なる、
現代の医学が推奨する「適正睡眠時間の見方」 を解説します。

🟦結論

適切な睡眠時間には個人差がありますが、
“科学的な推奨値” と “あなた自身の体調からのサイン” の
2つを組み合わせることで現実的に導くことができます。

米国睡眠医学会(AASM:American Academy of Sleep Medicine)
全米睡眠財団(NSF:National Sleep Foundation) は、
成人は 7〜9時間 を推奨するとしています。

ただし働く大人では、仕事・家庭・生活リズムにより
この時間を確保しにくいケースも多いため、
日中の眠気・集中力・気分の安定などの体調指標に基づき、
15〜30分ずつ調整する方法
が最も現実的です。

つまり、

「7〜9時間」を基準にしつつ、
自分の体調で微調整していく。

これが、現在最も合理的で実践的な
「あなたにとっての適正睡眠時間」を見つける方法です。

🟦医学的背景

■ 1. 睡眠時間に“推奨値”がある理由(AASM/NSFの科学的根拠)

睡眠時間には個人差がありますが、
医学界では American Academy of Sleep Medicine(AASM)
National Sleep Foundation(NSF) が、
年齢ごとに「健康維持に適した睡眠時間の推奨値」を示しています。

成人(18〜64歳)では、
7〜9時間がもっとも健康リスクが少ない範囲 とされています。

この推奨値は、
心血管疾患・代謝異常・メンタルヘルス・日中のパフォーマンスなど
複数の研究データを統合して導かれた科学的な目安です。

ただし、推奨値は“平均的に最も安全なゾーン”を示したもので、
全員に当てはまるわけではありません。


■ 2. なぜ個人差が生まれるのか?

適正な睡眠時間は、人によって大きく異なります。
その理由として、次のような 生理学的要因 が知られています。

  • 深い睡眠(徐波睡眠)の量に個体差がある
  • 体内時計(サーカディアンリズム)の特性
  • 年齢による睡眠構造の変化
  • 遺伝的な睡眠需要量の違い

同じ7時間でも「回復した」と感じる人と「足りない」と感じる人がいるのは、
睡眠の“質と構造”が個々で異なるため です。

このため、推奨値を“絶対値”として扱うのではなく、
自分の体がどう反応するかを見ながら調整する必要があります。


■ 3. 自分に必要な睡眠時間を知る方法(柳沢教授のアプローチ)

睡眠医学の研究者である 柳沢正史教授(筑波大学) は、
「科学的にもっとも正確に睡眠時間を測定する方法」として

十分な睡眠時間を確保できる期間を数日〜1週間つくり、
起床時の体調が安定する“平均睡眠時間”を把握する

というアプローチを紹介しています。

これは、
「自分の体が自然と回復するのに必要な睡眠量を測る」方法
であり、非常に理にかなっています。

もちろん、実生活で長期間の調整が難しい人も多いため、
現実にはこの考え方をヒントとして “自分の必要量を把握する姿勢” を持つことが重要になります。

🟦今日からできる対策|適正睡眠時間の見つけ方

① 起床時間から逆算して「基準の睡眠時間」を決める

働く大人の多くは、平日の起床時刻がすでに固定 されています。
これは体内時計にとって大きなメリットです。

まずは、起床時間を軸に AASM/NSF が推奨する
7〜9時間の範囲で「就寝の目安」をつくります。

  • 起床:6:30→ 就寝:22:30〜23:30

ここで大きく変える必要はありません。
“起床を中心に、寝る時刻をそっと整える”イメージで十分です。


② 朝の体調で「+15〜30分だけ」微調整する

睡眠時間は急に増減させるほど乱れやすいため、
調整幅は 15〜30分以内に限定するのが安全で現実的です。

調整の目安:

  • 朝の疲れが強い/スッキリ感が弱い
     → 就寝時刻を15〜30分 早める
  • 寝すぎた感・頭が重い
     → 就寝時刻を15分 遅らせる

※大事なポイント:毎日変えず、3〜5日同じ睡眠時間で様子を見ること。


③ 適正睡眠時間は「固定値ではなく変動する」

睡眠時間は次の要因で変動します:

  • 季節(特に冬)
  • 仕事量の増減
  • 子育て・家庭の状況
  • 年齢
  • 体調の波

誰にとっても「生涯ずっと同じが正解」はありません。

まずは“いまの生活に合ったちょうど良い睡眠量”を探してみるといいと思います。


🟦Q&A 読者の疑問に答えます!

Q1「7〜8時間寝ないとダメですか?」

一般的に 7〜9時間が推奨と言われますが、
これは “平均値の目安” であり、全員に当てはまるわけではありません。

医学的には、

  • 日中の眠気が強くない
  • 生活に支障がない
  • 朝のだるさが軽い

こうした状態なら、その人にとって適正睡眠時間の範囲 と考えられます。


Q2「短時間睡眠って医学的にアリ?」

“ショートスリーパー” の概念はありますが、
遺伝的に本当に短眠で問題ない人は、人口の1〜3%程度とされています。

多くの場合、

  • 本当は眠気があるのに気づけていない
  • 慢性的な睡眠不足に脳が慣れてしまった
  • 仕事・育児で仕方なく短眠化している

といったケースが多いため、
健康戦略として 意図的に短眠化を目指すのは推奨されません。


Q3「休日くらい睡眠時間を多めに取りたいけど、良くない?」

休日に +1時間程度までの延長にとどめましょう。
これくらいなら体内時計の乱れは比較的少なく、実践しやすいとされています。

ただし、

  • 平日との差が2時間以上開く
  • 昼まで寝る
  • 起床時刻が毎回大きくズレる

こうした習慣は “社会的ジェットラグ” と呼ばれ、
夜の眠気が遅れ、翌週の睡眠が乱れやすくなります。

🟦 受診の目安

以下のような場合は、医療機関での相談をおすすめします。

  • 不眠または日中の強い眠気が 2週間以上 続いている
  • 仕事・日常生活に支障が出ている
  • 動悸・めまい・抑うつ感など、他の症状を伴う
  • 睡眠時無呼吸が疑われる(いびき、息が止まる、強い眠気)

※ 睡眠の問題には医学的な要因が隠れていることもあります。無理せず早めの相談を。


🟦 著者情報

Dr.Toki(医師)
・臨床10年の総合診療医
・働く大人の「睡眠・疲労・ストレス・自律神経」の診療に従事
・日本医師会認定 産業医

働く大人を支えるために、
“今日から使える生活医学” をわかりやすく発信しています。


🟦 関連リンク(睡眠カテゴリ)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Dr.Toki(仮名)/医師・プライマリケア認定医・産業医
睡眠・疲労・ストレス・自律神経など「働く大人の不調」を専門にする生活医学の医師。
今日から体が軽くなる“正しい医学”をわかりやすく発信しています。

コメント

コメントする

目次