なぜ昼寝は「スッキリする人」と「逆にだるくなる人」がいるのか
みなさんは「昼寝の習慣」がありますか?
そして、自分にとってちょうどいい昼寝時間がどのくらいか、考えたことはあるでしょうか。
少し昼寝をしたつもりが、
- 起きたあとにかえってだるくなる
- 午後のパフォーマンスが落ちる
- 夜の寝つきが悪くなる
という経験をする人もいます。
一方で、昼食後の強い眠気のせいで、午後の仕事に集中できない人も少なくありません。
実はこれらは生理学・睡眠医学の分野でかなり研究が進んでいるテーマで、
本記事では「昼下がりの活力を高める短い仮眠(予防的仮眠=パワーナップ)」を中心に扱います。
“パワーナップ”と、仮眠後にパフォーマンスが落ちる昼寝は何が違うのかを整理しながら、
働く大人が取り入れやすい「最適な昼寝習慣」について、医学的な視点から解説します。
働く大人に最適なのは「15〜20分の短い昼寝」
昼下がりに眠くなるのは、体内リズム(サーカディアンリズム)にともなう “生理的な眠気” です。
そのうえで、働く大人にとって現実的で効果的なのは、
「午後早め(昼下がり)にとる、15〜20分程度の“うたた寝に近い短い昼寝”」。
これくらいの長さであれば、
- 午後のパフォーマンスや集中力の改善
- 気分のリフレッシュ
- 夜の睡眠への悪影響が少ない
といったメリットが期待できます。
一方で、
- 昼寝が長くなり、深い睡眠に入ると
→ 起きた直後に強いだるさ・ぼんやり感(睡眠慣性)が出やすくなる
※ 目安は 30分を超える昼寝 で出現しやすいとされています - 1時間以上の昼寝が習慣化している人では
→ 心血管疾患・代謝異常などのリスク上昇との関連を示す報告がある
という点も医学的には押さえておきたいところです。
大事なのは
“昼寝で深い眠りに入りすぎないこと”。
短時間の軽い昼寝は、働く大人にとって午後の生産性を支え、生活リズムを整えるうえでも有効なツールになります。
昼下がりに眠くなるのは異常ではない|体内リズムがつくる自然な眠気
昼食後の眠気には、食後血糖の影響がある場合もありますが、
食事の有無に関係なく“毎日ほぼ同じ時間に眠気が生じる” という研究があります。
これは、人間の体内時計(サーカディアンリズム)がつくる
「午後の眠気のピーク」 によるものです。
生理学的には、
- 夜間の主睡眠から約15〜16時間後
- 次の主睡眠の約9〜10時間前
に眠気が自然と高まる仕組みになっています。
例)23時就寝 → 6時起床の人なら
→ 13〜15時ごろに眠気がピークになる イメージです。
長い昼寝で“だるさ”が出る理由|睡眠慣性という現象
昼寝が長くなると、睡眠が深い段階に入りやすくなり、
そこから急に起こされると脳が「睡眠モード」から切り替わりにくくなります。
そのため、
- 頭がぼんやりする
- 体が重く感じる
- 判断力や反応速度が落ちる
といった 睡眠慣性 が強く出ます。
一般的には 30分を超える昼寝で起きやすい とされますが、
30分未満でも深い睡眠にわずかでも入ると睡眠慣性が生じる という報告もあります。
さらに、
睡眠慣性が出るような昼寝をすると、その日の夜の睡眠の質が低下する ことが分かっています。
1時間以上の昼寝が勧められない理由|健康リスクとの関連
複数の疫学研究(例:Yamada らの前向きコホート研究, Sleep 2015 など)では、
1時間以上の長い昼寝を習慣化している人 で、
- 心血管疾患
- 高血圧
- 代謝異常
- 認知症リスク
といった健康リスクが高い傾向が報告されています。
昼寝そのものが直接の原因と断定はできませんが、
長い昼寝=深い睡眠に入りやすい という点が生理学的なデメリットと考えられています。
そのため、
毎日の長い昼寝を推奨しにくい、というのが現在の医学的な立場です。
なぜ短い昼寝が効果的なのか|“うとうと”が脳を回復させる
15〜20分程度の短い昼寝には、次のようなメリットがあります。
- 深い睡眠に移行しにくい
- 起床時の睡眠慣性が出にくい
- 集中力や気分が改善しやすい
- 夜の睡眠への悪影響が少ない
いわゆる「うとうと」レベルの浅い睡眠でも、
午後の眠気やパフォーマンス低下の改善が認められています。
Q&A 昼寝についてよくある疑問に答えます
Q1 昼寝のあとにだるくなります。どうすれば避けられますか?
昼寝後のだるさは、深い眠りに入った時に起こりやすい現象です。
対策はとてもシンプルで、次の2点に集約されます。
- 15〜20分以内で切り上げる(寝過ぎない)
- ベッドは使わず、椅子やソファにもたれる程度の浅い姿勢で寝る
この2つを守るだけで、
深い眠りに入りづらくなり、昼寝後の“ぼんやり感”は大きく減ります。
起きたら光を浴びる・顔を洗う・軽く体を動かすなども、
回復を助ける簡単な工夫として有効です。
Q2 昼休みにコーヒーを飲むのですが、昼寝とどう組み合わせると良いですか?
コーヒーのカフェインは 15〜45分で効き始めます。
そのため、もっとも効果的な手順は、
コーヒーを飲む → すぐに15〜20分の短い昼寝
この時間軸でカフェインを摂取すると、起きる頃にカフェインが働き始め、午後の眠気が軽くなります。
専門的には「コーヒーナップ」と呼ばれています。
Q3 アラームは必要ですか?
はい。昼寝の最大の失敗は“寝過ごしです。
15〜20分のアラームを一つだけセットしておくと、
深い睡眠に入る前に確実に起きられるため安心です。
昼寝を工夫しても眠気が強い場合は要注意
昼寝をうまく調整しても、日中の強い眠気・だるさが続く、いびきや無呼吸が疑われる、夜間睡眠が著しく乱れる場合は医療機関での相談をおすすめします。
睡眠シリーズ|関連リンク
- 睡眠各論①:起床と体内時計 起床時間の固定とサーカディアンリズムの整え方
- 睡眠各論②:睡眠時間の最適化 必要睡眠時間の個人差と、量より質の考え方
- 睡眠各論③:昼寝のコツ 正しい昼寝の方法と午後の生産性との関係
- 睡眠各論④:光と睡眠リズム 朝と夜の光刺激が体内時計に与える影響
- 睡眠各論⑤:運動と睡眠の質 運動のタイミングと強度が睡眠に及ぼす効果
- 睡眠各論⑥:カフェインと寝酒 カフェインの半減期と寝酒が睡眠を悪化させる理由
- 睡眠各論⑦:寝室環境(温度・光・音) 環境調整で入眠と睡眠の質を最大化する方法
- 睡眠各論⑧:メンタルと睡眠 思考の暴走と自律神経の乱れが睡眠を妨げるメカニズム
- 睡眠各論⑨:眠れない夜の行動 悪循環を断つ行動戦略(CBT系アプローチを含む)
- 睡眠各論⑩:睡眠負債と休日調整 寝だめの科学と、週末で整える正しい方法
- 睡眠各論⑪:睡眠の本質レム 睡眠・ノンレム睡眠の役割と“脳が眠る理由”
- 特別編:CBT-I(不眠の認知行動療法) 世界標準の不眠治療を生活に取り入れるために

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